harumakipokeのブログ

ポケモン勢がまったり書くブログです。 ダブルバトルの内容多め

学生将棋自戦記

はじめに

 木曜日、趣味で曲を作ってる研究室同期のアカウントがわかったので、試しに聴いてみたら結構好みだった。以前から創作には興味があり、モノを作りたいという工学部に入った動機もそこからきている私だが、これまでやってきたのは対人戦のスポーツとゲームのみだ。自分のやってきたことが作品として残る趣味にはある種の羨望のようなものがある。自分が7年間やってきた学生将棋を語るうえで外せない対局の一部が残念ながら部誌に載っていないため、こうしてカタチにしようとキーを叩いている。今回取り上げない秋季大会と学生王座戦は北大将棋部の部誌に載っているので、そちらを読んでほしい。

 

2022年度北海道春季個人戦vs東くん(北海学園大学

 1局目は学園の東くんとの将棋だ。強かった1つ上の代が抜け、個人戦優勝筆頭候補に躍り出た彼と2回戦と早々に当たるのはアンラッキーな一方で、非常にワクワクしたことを覚えている。高校から続けてきた四間飛車を指していた頃は格上を相手に勝つビジョンが浮かばず苦しい思いをしたが、大学2年の秋季大会団体戦で学園に苦い敗北を喫してから雁木を指すようになり、このときの私は研究範囲にハマれば強豪相手にも勝負できるという自信をもって対局に臨むことができるようになっていた。私が才能のない将棋を大学でも続けることにしたのは蒼の彼方のフォーリズムというゲームの影響が大きいのだが、作中の表現を借りれば、このとき(と2022年度秋季団体戦)の私は「届いて」いた。

 

こちら後手で初手から

 

▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩▲4八銀△3二銀

▲5八金右△8四歩▲4六歩△8五歩▲7七角△4三銀

▲4七銀△3二金▲5六銀△5四歩▲7八銀△6二銀

▲6八玉△5三銀▲7九玉△7四歩▲4八飛△7三桂

▲3六歩△4一玉▲3七桂△3一玉▲1六歩△5二金

▲9六歩△9四歩▲1五歩△7五歩▲同歩△8四飛(下図)

 

 

 途中駒組が怪しかったところはあるものの戦型は右四間飛車左美濃vs雁木に。最後の7五歩同歩と突き捨てを入れてから8四飛と浮くのが研究手。歩を切りつつ7六に駒を打つスペースを作り、先手から仕掛けてこなければ将来的に6四銀も狙っていける。

 

上図からの指し手

 

▲4五歩△同歩▲2二角成△同玉▲6六角△3三角

▲4五飛△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△6六飛

▲同歩△同角(下図)

 

 

 途中4五飛は初めてされた対応。先手からの角交換は同桂が飛車に当たることを活かし、8六歩から飛車角を捌いた上図は早くも後手が1000点ほどリードしている。8七歩に代えて8八歩ならこの順は成立せず難しい局面だった。

 

上図からの指し手

 

▲7七銀△同角成▲同桂△7六歩▲7八金△7七歩成

▲同金△7六歩▲同金△6四桂▲6六金△7七角

▲8八角△8五桂▲6七金引△6六銀▲7四歩△5五歩(下図)

 

 

 飛車に続いて角も切り飛ばし、7筋の突き捨てを活かして攻め立てる。最後の5五歩と銀取りに当てつつ飛車の横利きを止める手の感触が良く、はっきり優勢を意識した。

 

上図からの指し手

 

▲8六歩△5六歩▲8五飛△6七銀成▲同金△8八角

▲同玉△5七歩成▲同金△7六銀▲8一飛成△7七金

▲8九玉△8八歩▲7九玉△6八角▲6九玉△5七角成(下図)

 

 

 銀を取らせて飛車を8筋に転換し成り込むことで、最後の山場を作られた。先手玉は必至がかかっており、後手玉が詰むかどうかの勝負である。3三への放り込みからの筋が怖いが、2四玉の形が捕まらないと判断してこの変化に突っ込んだ。

 

上図からの指し手

 

▲5五角△4四歩▲7七角△同銀成▲3三金△同玉

▲2五桂△2四玉▲1六桂△1五玉▲2四桂△2六玉

▲1六飛△3七玉▲1七飛△2七金▲2六銀△4八玉

▲2七飛△6八金(終局図)

まで106手で後手の勝ち

 

 

 途中7七角には5八金から9手詰があったようだが、自玉の不詰を読み切るのに集中していたため全く気付かなかった。最後は玉がするすると逃げだし勝利。強敵相手に勝利できたことは勿論だが、それ以上に強敵と当たっても臆せず盤の前に座れたことが本当に嬉しかった。なお、あずまたいかがやとの死闘に全てを出し尽くした春巻きは、続く3回戦、研究にハメるも室蘭工業大学三浦くんにウソのように逆転負けした――

 

2022年度トリプルアイズ杯vs原さん(京都大学

 2局目は全国大会での京都大学原さんとの将棋だ。私が大学でも将棋を続けた理由の1つに先ほど蒼の彼方のフォーリズムを挙げたが、もう1つの理由は全国大会にある。私は高3の高文祭県予選でチームメイトが全勝するなか1敗し、全国大会である高文祭でも他2人が2-2、1-3のなか自分だけ0-4と、完全にチームメイトに連れてきてもらっただけの人になってしまった。この悔しさから、全国大会で1勝もせずに将棋を引退することなどプライドが許さないとなってしまったのだ。春季大会団体戦の学園戦という非常に大きな勝負所で負けた私はこのトリプルアイズ杯でも部員たちに連れてきてもらった立場であり、全敗で帰るわけにはいかなかった。加えて京都大学には高校将棋部時代の先輩である生川さんがおり、恥ずかしい将棋を見せることはできない。北大将棋部には四高将棋部出身者が”なぜか”3人も所属しており、対局者10人中4人が同高出身という珍しい大学将棋全国団体戦が始まった。

 

こちら先手で初手から

 

▲7六歩△8四歩▲7八銀△3四歩▲6六歩△8五歩

▲7七角△6二銀▲2六歩△4二銀▲2五歩△3三銀

▲6七銀△3二金▲7八金△5二金▲4八銀△4一玉

▲5八金△5四歩▲3六歩△4四歩▲4六歩△3一角

▲3七桂△4三金左▲4七銀△3二玉▲6八玉△7四歩

▲2九飛△7三桂▲1六歩△1四歩▲9六歩△9四歩

▲5六銀右(下図)

 

 

 戦型は雁木vs土井矢倉に。ノーマルな矢倉に比べ指されることが少なく経験はあまりない形ながらも、2九飛と下段飛車の状態で両端を突き合い銀を腰掛けるのは研究範囲。6四歩には4五歩同歩3五歩同歩6五歩のように強引に攻めていく手がある。

 

上図からの指し手

 

△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七歩

△8一飛(下図)

 

 

 8六歩からの角交換が行われた後の上図で7二角と打って8二飛6一角成5一金4三馬同玉4五歩と進めるのが研究ではあったが、その後の難解な変化の記憶が怪しく自重することに。研究を実戦で使えるレベルまで仕上げていなかったことを後悔したが、気持ちを切り替え千日手を視野に駒組を進めた。

 

上図からの指し手

 

▲7七桂△3八角▲2六飛△4九角成▲4七銀△3九馬

▲4八角△同馬▲同金△6四歩▲5六銀右△6三銀

▲4五歩△同歩▲同銀△4四歩▲5六銀引△6二金

▲2九飛△5一飛▲4七銀△8一飛▲8九飛△5二金

▲5八玉△4二金引▲6八玉△4三金直▲5八玉△4二金引

▲6八玉△4三金直▲5八玉△4二金引▲6八玉△4三金直(終局図)

まで80手で千日手

 

 

 小競り合いはあったもののお互いに打開を諦め千日手に。先ほどの7二角の筋などは個人戦なら記憶が曖昧なままでも突っ込んだかもしれないが、団体戦で中盤に入ってすぐに細い攻め筋を切らして負けにするような展開は避けたかった。

 

指し直し局、こちら後手で初手から

 

▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△3二銀

▲7六歩△4四歩▲6八玉△8四歩▲7八銀△8五歩

▲7七銀△4三銀▲7八玉△3二金▲5八金右△6二銀

▲5六歩△5二金▲6六歩△7四歩▲6七金△6四歩

▲5八金△7三桂▲7九角△6三銀▲3六歩△4二玉

▲3七桂△9四歩▲9六歩△1四歩▲1六歩△5四銀右

▲4六角△4五歩▲6八角△6五歩(下図)

 

 

 戦型は千日手局と同様土井矢倉vs雁木に。こちらが下段飛車になっていない以外は同一の局面で先手から4六角と手を変えてきたが、4五歩に6四角は6三金があるため成立しない。2四歩はあったと思うが同歩以外に4六歩と強く角を取る変化もあり、6八角と引いて先手が受けにまわる展開となった。こちらはゼロ手で角道を開けられているため一気に攻め倒してしまいたいところ。歩を突き捨てていった。

 

上図からの指し手

 

▲同歩△8六歩▲同歩△7五歩▲2四歩△同歩

▲同角△同角▲同飛△2三歩▲2九飛(下図)

 

 

 歩の突き捨てを入れている間に飛車先の交換から攻めの要の角を盤上から消しつつ下段飛車を実現され、攻めが難しくなってしまった。2四同角には8一飛として3三角成同桂の後の2七歩から2一飛の大転換を見据えた順が勝ったようだ。

 

上図からの指し手

 

△4四角▲6六角△7六歩▲4四角△同銀▲7六銀

△6五銀▲同銀△6六歩▲同金△6五桂▲6四角

△8四飛(下図)

 

 

 角のラインを死守する発想は悪くなかったが、4四角ではなく3三角とするべきだった。その後6六角7六歩と進んだ際に3三角成と異なり4四角は王手ではないので7七歩成が入ると勘違いし、同角があることを見落としていた。本譜は7七歩成と指す前に気づけたものの、攻めをさっぱりさせてしまい上部に厚みを築かれると苦しい展開にしてしまった。秒読みのなか指した最終手8四飛は7五銀には6四飛、7五角には7四飛として、苦しいながら飛車角交換で攻め続けるつもりの一手。8四飛と走れれば攻め倒せると思っていたので、7三角成か9一角成こい!と念じながら指したことを覚えている。

 

上図からの指し手

 

▲7三角成△8六飛▲7五銀△8七角▲6八玉△6六飛

▲同銀△7八金▲5九玉△3八銀(下図)

 

 

 祈りが通じたのか7三角成。8四飛と走れて一気に視界が開け、詰めろ飛車取りをかけたところで強く勝ちを意識した。

 

上図からの指し手

 

▲6七金△2九銀不成▲5八玉△3八銀成▲5九銀△6九金

▲6五銀△5九金▲同玉△4九飛▲6八玉△6九飛成

▲7七玉△6五角成(終局図)

まで88手で後手の勝ち

 

 

 最後は上下から挟撃の形になったところで投了され勝利。将棋歴7年目にして初めて全国大会で1勝をあげることができた。また、隣で指していた生川先輩にいい将棋だったという旨の言葉を終局後かけていただき、非常に嬉しかった。高校の頃は実力にあまりに差がありごくたまに将棋を教わるときもすぐに吹っ飛ばされていたので、将棋を続けていて良かったと強く思ったことを覚えている。

 

おわりに

 スポーツやゲームは基本的にやってきたことが作品としてカタチに残る趣味ではない。プレイすることを辞めてしまったら身に着けた技術も全て無意味になってしまう。私は将棋を始める前、ポケモンダブルバトルをやっていた。そこでは幸運にもシニアカテゴリ日本準優勝&世界大会出場という結果とその景品、日本代表決定戦決勝の映像、知人友人とのバトルビデオが残った。日本代表決定戦では準々決勝などもっとアツい試合があったし、それこそ世界大会でも手に汗握る勝負をしたが、それらの細かい内容はもう覚えていない。詳細に思い出せるのは映像として記録に残っている日本代表決定戦決勝のみだ。きっといつか、記録にのこっていない印象的な1戦よりも、バトルビデオとして記録に残した何気ない1戦を振り返るようになる。スポーツやゲームではそのときそのときの体験を重視する傾向が強いような気がするが、思い出は色褪せる。どうかその体験を記憶として思い出に留めるために記録として残してほしい。私はこの記事を、学生将棋を振り返るいつかの私のために残す。